雰囲気しか見てない感想
『百器徒然袋―風』 京極夏彦





文庫でもノベルスでも、やたらと厚い印象のある妖怪シリーズ。本屋をうろうろしていたらこの本が「新刊!」で出ていたので購入したんだけど、文庫本なのに高いよ…。とはいえ、「印刷された紙」の原価は意外に高いらしいから、本が厚くなれば値段も正比例して高くなるのは仕方無いみたいだね。

百器徒然袋シリーズを手に取るのは、実は初めて。

妖怪シリーズというのは、胸を張って推理物だよとは言いにくい事件の解明と、関口君のうだうだおろおろぶりと、古本屋さんの雑学講義を楽しむシリーズだと思っていた。作者は人間の異常性を妖怪に見立て、愚直な関口君は人間の本性も見立てられた「妖怪」も一緒くたにして怖がり、人づてに話を聞くだけで現実レベルで起こっている事件まですっきり見抜く古本屋に馬鹿にされる。私はトリックを考えながら本を読むなんてできないから、関口君と一緒に「どこまでが見立てでどこまでが現実なんだ!やたらにおどろおどろしいけど一体何が起こっているんだ!」と思いながら話の筋を追う。そして、最後は古本屋による見立ての解説を聞き、ふむふむ成程と納得する。そういう楽しみ方をするシリーズだと、少なくとも私の中では位置づけられていた。

ところが。今回読んだ『百器~』の主人公は、関口君じゃない。それどころか、関口君が登場して台詞を喋ることすらない。今回の主人公は言わば普通人代表の本島君で、おまけに彼は関口君のように人間や妖怪を怖がったりはしない。彼はただ、平穏な日常が(主に例の迷探偵のお蔭で)かき乱されること、事件に巻き込まれることだけを憂慮する。彼は自分が異常なのではないかと怯えたりしないし、(迷探偵以外の)人間を彼自身の物差しで計ることができる。というか、本作ではそもそも事件自体におどろおどろしさが無い。

妖怪シリーズも読んでいない作品の方が多いくらいだから断言は出来ないけれど、百器徒然袋のシリーズはちょっと毛色が違うのかな?迷探偵のファンのための作品なのかな?印象としては、妖怪シリーズを知っている人のための番外編、という感じ。中篇連作だったから、妖怪シリーズより一気読み必要度が低いのは良かった。でも、それ以外の点では好みじゃなかったな。
[PR]
by navet_merci | 2007-11-14 00:35 | 本の感想
<< 熱く語って何になる? 記憶のあれこれ >>