なむなむ!
『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦





こんな奴いねーよ!と突っ込みたくなるような人達がわさわさ動き回る物語。「おともだちパンチ」「パンツ総番長」「詭弁論部」といったオリジナリティ溢れる愛すべき創作概念に笑い、ヒロイン「黒髪の乙女」(小柄な黒髪美人・心身ともに健康・天然)に萌え、不器用ながらも微笑ましい恋愛に心を温めるべき物語。主人公は妄想を巡らし殆どストーカーと化しお友達連を巻き込み巻き込まれしつつ散々馬鹿をやり、最後はハッピーエンド。(この人のハッピーエンドって、「会いにきた」とか「デートにこぎつけた」とか「その後の展開」を予想させる形になっていて綺麗だなと思う)

全体を一文でまとめると、「可愛いは正義!」

主人公が一人称の部分とヒロインが一人称の部分とが交互に出てきて、両者の視点から物語が進む。ヒロインは持ち前の可愛らしさと運の良さと物事を明るい方向から見るポジティブさを武器に楽しい大学生活を送り、主人公は不自然なまでに偶然の出会いを演出しまくり(しかしヒロインは天然なので気付かない)自分を印象付けて、最後にはちょっと命なんかも張っちゃって、そして何とかかんとかヒロインに「私この人とご縁があるみたい」と思わせることに成功する。変な人や変な事件が頻発してそれが面白いのだけれど、筋と結末だけ見ればれっきとした恋愛物。ヒロインがあざといまでに可愛らしくて、「いやこれ人間の女なの?」という感じなので不自然と言えば不自然ではあるけれど。


個人的に楽しみどころだったのは、変な人や変な事件の方。

ヒロインが巻き込まれる変な事件は、順に東堂との出会いに始まり李白との飲み比べに終わる酒飲み事件、李白の持ってきた貴重な古本を巡る古本市事件、大学の学園祭と学祭事務局を悩ませたゲリラ演劇にまつわる事件、驚異的な風邪の流行の元凶であった李白の風邪を治しにいく風邪事件。
物語におけるジョーカー的な位置にいるのが「李白」と呼ばれる老人で、「何か凄いものを持っているなんか凄い人」とされている。高利貸しで、偽電気ブランというカクテルのレシピを知っている妖怪じみた老人。古本の精や、自称天狗で実際半人半妖なんじゃないかと思われる人(樋口)も出てくる。ヒロインはこれら有象無象を含めた全登場人物から好意的な扱いを受けるんだけど、この人自覚が無いだけで李白さんとか樋口とかそっち側の人達と同類なんじゃないかな…

大学の仲間達(詭弁論部、学祭事務総長、パンツ番町と象の尻の人、その他学祭関係者)、京都のおじさん衆(東堂、古本屋達、李白さん、古本の精)、どっちにも属しているらしき人達(春画研究会、羽貫、樋口)のキャラが総じて濃い。やってることも割とおかしい。


笑って読める、かつ登場する「変なひと・こと・もの」のディティールを追及するのが楽しい本だと思う。「恋愛=青春=馬鹿」という図式の元でなら、恋愛物としても読めるのかもしれない。私は無理だったけれど。
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by navet_merci | 2008-10-02 15:06 | 本の感想
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